感覚・知覚に関する認知バイアス1

 

ここでは、感覚・知覚に関連する認知バイアスと、その意味についてまとめている。

 

 

感覚とは 感覚器官が刺激されたときにおこる意識経験のこと。主なものに視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感がある。知覚とは、外界から刺激を受け取り、その刺激に対して意味づけをするまでの過程のことだ。そして感覚から生じるバイアスは、種々様々にある。それが対人関係や印象に影響を与える部分も大きい。

感覚・知覚でよく知られているのが「選択的注意」または「カクテル・パーティー効果」だ。
カクテル・パーティー効果は、大勢が話している中でも、自分を呼ぶ声は聞こえるし、気になる話は耳に入ってくるという現象のこと。聴覚だけでなく、気になる物は見えているが、関心がない物は目に入らないという場合など、視覚や他の感覚でこの効果を使いたい時は、選択的注意としたほうがいいだろう。

匂い、嗅覚に関するバイアスでは、「プルースト現象」がある。ある匂いを嗅ぐことで、懐かしい人を思い出したり、ある場面などが思い浮かんだりすることだ。

 

バイアスは誰にでも、どこにでも存在しているので、気をつけて観察していると、様々なところでバイアスが見えてくる。

感覚・知覚に関する心理学用語については、コラムに使える感覚・知覚に関する心理学用語を参照してほしい。

 

選択的注意

まずは選択的注意が最も使いやすい。視覚聴覚だけでなく判断や意思決定から人間関係まで、様々な状況や場面を分析する時に使えるバイアスだ。

意味は、多くの情報が溢れている時、その中から特定の情報を選んで注意を向けること。人は沢山の情報源をフィルターにかけ、自分に必要な情報だけを取得している。そのため見えているはずなのに、見えていない、そこにあるのに気がつかないという現象がおこる。カクテルパーティー効果は選択的注意の1つである。

カクテルパーティー効果

選択的注意の1つ。興味や関心がないと聞き取れない、聞こうとしないから聞こえないという現象。主に聴覚刺激に使われることが多いため、音や声以外で使うには、選択的注意の方が用語として使いやすい。

例としては、日本語と英語が同時に流れると、日本語の方が聞こえてきやすい。バッググラウンドミュージックが流れる店で、興味のない曲は耳に入らないが、大好きな曲が流れるとそれに気が付き、耳に入ってくる。大勢いる中では、知らない人たちの声は耳に入らないが、家族や友人の声は聞き取ることができるなど。

だまし絵効果

同じ絵なのに、視点を変えれば、見ていたものと違うものが見えてくる現象。1つの絵なのに、2つ以上の見え方をする図形を多義図形といい、対象と背景が入れ替わって見えるルビンの壺は有名である。

視覚的な錯視の用語であるが、視点を変える、裏表で違うものが見えてくるという点を、物の見方、捉え方に応用して使うことはできるだろう。例えば性格を表現する場合、神経質を繊細、几帳面のどちらかで表すか、天真爛漫と見るか自分勝手と見るかの違いなどである。

プルースト現象

ある一定の匂いが記憶や感情を呼び起こす現象。プルースト現象は、直接ある匂いを嗅ぐことを前提としているが、匂いに関する単語を聞いただけでも同様の現象が起こることが分かっている。匂いの記憶は、視覚や聴覚による記憶より情動的で、鮮明に記憶を思い出させ感情を呼び起こす力が強い。

フィーリングの二重性

つかんで引っ張る、つかんだまま離さないという仕草から、つかまれた相手は、触れ合いたい、相手との物理的な距離を縮めたいという相手の願望を敏感に察知し、間接的な触れ合いから、相手が心の触れ合いをもっと親密にしたいと思っているのだという気持ちを感じ取る状態。心理学者のヴァ―ガスによる。触れ合いによって肌で感じることと同じように、触れ合っていなくても感じるという意味

画像優位性効果

情報は話して聞かせるより、ビジュアルと音による情報の方が記憶に残るという現象。分子生物学者のジョン・メディナによると、聞かせただけの情報の場合、72時間後には内容を約10%しか覚えていないが、画像を加えた場合は65%が記憶に残っているという。

サブリミナル効果

意識できないほど非常に短い時間に映像を提示するような形で視覚を刺激したり、非常に小さい音量の音声で聴覚を刺激するなどし、知らないうちに潜在意識に影響を与える現象。洗脳やプロパガンでよく使われる言葉である。

 

感覚・知覚について、おさえておく。

感覚・・・大まかに3つに分類される。

  • 特殊感覚・・・五感の中でも視覚、聴覚、嗅覚、味覚がこれに入る。他に平衡感覚がある。
  • 体性感覚・・・五感では触覚が体性感覚である。触覚は体性感覚のうち皮膚感覚(表面感覚)に入り、皮膚感覚には温度感覚や痛覚などもある。体性感覚には他に深部感覚があり、運動感覚や位置感覚は深部感覚になる。
  • 内臓感覚・・・臓器感覚と内臓痛覚がある。臓器感覚はお腹が空いた、おしっこがしたいなど、臓器に物理的に生じる感覚のこと。

 

知覚とは、外界から刺激を受け取り、その刺激に対して意味づけをするまでの過程のこと。     例えば、皮膚が熱さや冷たさという感覚情報を受け取り、熱い、冷たいという意味づけをするのが知覚である。脳は知覚として五感だけでなく運動感覚、内臓感覚なども含め情報を処理し、統合する。

認知とは、知覚された上で、それが何なのかを判断し、どういうものか解釈したりする過程のことである。脳は反射的に効率よく判断し、解釈を行うが、この時に認識と事実にズレが生じることがある。このズレを認知バイアスという。

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