総理になって、変わったのか変わらないのか。
総裁選前は早期の解散総選挙に否定的な立場をとっていたのにも関わらず、内閣首班も指名されていない段階で解散・総選挙を宣言してしまった石破茂首相。 発言のブレが目立つ、豹変したと指摘されても仕方がないが、首相本人はそう言われることについてどう思っているのだろう。
ということで、文春オンラインで石破首相の就任会見を分析した記事を公開いたしました。
第102代内閣総理大臣に指名され、会見に臨んだ石破首相。 冒頭から15分ほどは自らの内閣における基本方針について、淡々と説明した。 基本方針は「守る」、石破内閣では5つの守るを実行していくという。
これまでの講演や演説、会見などでは、ほとんど資料を見ることなく話していた石破氏が、この日は何度も手元の資料に視線を落とし、読み上げていた。 首相という立場では発言に注意しないといけないのだろう。
質疑応答では、手元の資料を見るのが経済政策の話題に多いことがわかる。 記者から「経済について伺います」と言われた途端、資料の視線を落とした。 前から言われていたように、経済政策は安全保障や防衛問題などより不得手なのだろう。 質問されている間中、首相は資料を見続けていた。 答えている間も何度も資料に目を落とし、読み上げているような場面もあった。 口調は落ち着ているが、語調は弱く、言葉に力強さはなかった。
言葉の使いかたにも、苦手意識が出ていた。
派閥の裏金事件で処分された議員の公認についての質問には、“私が”、“私自身が”と自らが説明する姿勢を強調。 リニアについて問われた時も“私といたしましては”と話す。 首脳外交についても“私も”と自分の考えを説明。 しかし質問が経済政策、金融政策になる、と一貫して“政府として”という立場で答弁し、“私”ではなく“私ども”と表現。 経済政策ではあくまで慎重な姿勢を崩さなかったのだ。
質疑応答一問目、幹事社から解散について「総理になったら変わっちゃったんじゃないの。豹変するんじゃないの、そうした声がでていますけれども、それにはどうお答えになるか」と問われると、軽く頷いたり、ほんのわずかに頬を緩めたりしながらまっすぐに記者を見ていた。 表情を変えることなく、独特の口調とリズムで落ち着いた調子で答えていく。
自民党員や議員らではなく、国民に自分が作る内閣が信任されるかどうかを問いたい、納得してもらいたい、そのためなら豹変したと言われても、自分ができるかぎり説明するということなのだろうか。
では、自分の発言の変化をどう思っているのか。 質疑応答中盤、北海道新聞の記者が解散について、改めて説明を求めた時のことだ。 「総裁選のときに言っている、いってらっしゃっていることとやはり違うというのが大方の受け止め」というと、俯いて視線を伏せ、口元を一文字に結んだ。 そして、ほんの少しだけ歯を見せて微笑んだのだ。 苦笑いしているようにも見えるその笑いは、苦悩する胸のうちを表しているようでもある。 本人も発言を変えたことを良しと思っていないようだが、何か考えがありそうな含み笑いでもあった。
微笑みはすぐに消え、石破首相は固い表情に戻った。 発言のブレについては、突っ込まれたくないのだろう。 公認問題について答えたものの、この質問は完全スルー。 広報の司会が言葉を発するまでしばらく間が空くが、石破首相は質問されたことすらなかったかのように振舞った。
野党議員との面会では、石破カラーを「出せしたらぶったたかれる」「本音を出すと国民は喜ぶ、党内は怒る」と愚痴る様子が報じられた石破首相。 党内基盤が弱いと言われる中、それでも解散総選挙に打って出たのが吉と出るか凶と出るか、答えは今月27日に出る。