記憶に関するバイアス1、2に続いて、3では記憶が変化することに関するバイアスと、その意味についてまとめている。
バイアスは、知覚や思考の偏り、意思決定などにおけるその人物や組織などの心理的な傾向や現などである。バイアスは本人が気がつかないものから、自分でわかっているもの、はたから見ればすぐにわかるものまで様々あるが、どんなバイアスが生じているのかは、その人物の言動を観察したり、集団や組織の行動などを見たり聞いたりして分析し、判断することになる。
人はその時、見たり聞いたりしたそのままを完全に覚えているわけではない。時間の経過、他の人からやメディアから情報を得ることによって、記憶は変化しやすい。またその時の状況や感情によっても、記憶は変わってしまう。また、他人に誘導されたり、自分の都合よく思いこむことで記憶がすり替わってしまったり、そうだったと思いこんでしまうことで記憶は変わってしまうといわれる。
記憶の変化に関するバイアスには、以下のようなものがある。
事後情報効果
ミステリーや刑事ドラマ、裁判モノの映画などで、証言者の供述が誘導尋問や思い違いなどによって変わってしまったというストーリーがあるが、それはこの効果が使われている。
経験した出来事に、後から与えられた情報によって、記憶が変わってしまうこと。後から何らかの情報が与えられると、意識しないうちに、その情報と辻褄が合うように記憶が変化したり、すり替ってしまう現象。証言における誘導尋問が問題視。人が無意識のうちに記憶を都合よく書き換えることもある。事後情報効果は経験した出来事に関する記憶のすり替わりだが、経験しないことを経験したように記憶がすり替わるのが、フォルス・メモリーである。
フォルス・メモリー(虚偽記憶)
こちらは刑事ドラマなどやミステリーで証言者が、誘導尋問されたり、何度も同じようなことを聞かされているうちに、それを見た、聞いたと証言してしまうシーンがある。この時に起こっているのが、この効果になる。
実際に経験していないにもかかわらず、わずかな情報によって、あたかも起こったことのように思い出してしまうこと。まったく経験したことがないのに、ある情報が与えられることによって経験した記憶が作られ、思い出すことであり、思い出す回数が多いほど、記憶が鮮明になる現象。
バラ色の回顧
時が経つごとに記憶や経験が美化されていく傾向。あの時はよかったと思いだす。嫌な事や不快な感情は時とともに薄れていくというバイアスもある。
圧縮効果
最近の出来事は実際よりもずいぶん前に起きたように感じたり、昔の出来事は実際よりも、最近起きたように感じる現象。