『ミステリと言う勿れ』で、事あるごとに出てきたのが、主人公の整くんが他人のくせを真似して、あっと気がつき手を止める場面。この“くせを真似する”ということにも、専門用語があります。
それは「ミラーリング」というものです。
同調する行動の違いよって、ノンバーバル・コミュニケーションとバーバル・コミュニケーションの違いああります。
ノンバーバルは非言語コミュニケーションといわれるもので、しぐさや動作、姿勢や表情、視線の動き、声や口調 バーバルは話の内容、話した言葉、言い回し、口ぐせなど言語的表現
ドラマの中の整君のくせは、ノンバーバル・コミュニケーションによるもの
そして声や口調、話し方などの聴覚的なものから真似しているのではなく、しぐさや動作を真似しているので、視覚的な情報優位のノンバーバルからのミラーリングです。
ミラーリングには、無意識的な同調行動と、意識的に相手と同調させる2つがあります。
整くんは、ガロくんに「君、人の癖をまねるとこ、あるよね」と指摘され、自分のミラーリングに気がつきます。
「そういうのって普通、子供が誰かの気を引きたい時にするんだけど」と言うガロくん。
ドラマでは、この言葉が整くんの幼少期の体験を暗示する言葉になっています。
気になる人、気を引きたい人のしぐさを無意識のうちに真似してしまう整くんは
大切な人とラポールとよばれる信頼関係を築けた状態になるのが難しかったのでしょう。
無意識的なミラーリングでわかりやすいのは、仲が良い夫婦が同じような表情やしぐさをする、 目上やパワーのある人が足を組んだり腕を組んだりすると、他の人も同じ動作をしている、 1人がポケットに手を入れると、他の人もポケットに手を入れる、 相手が首を傾げたら、自分も首を傾げている、 並んで歩いている2人の歩幅や歩調が同じになっている、などです。
コミュニケーションを取っている相手とより早く信頼関係を築くために、相手の動作やしぐさ、姿勢などを合わせることです。恋愛関係でもビジネスでも、ペーシングはあらゆるところで使われています。
例えば、商談相手と話すスピードを合わせる、 ビジネスの相手と同じようなタイミングで頷いてみる 気になる相手の呼吸のリズムに合わせてみる、などです。
ただミラーリングには注意しておく点があります。
『ミステリと言う勿れ』でも、ガロくんが整くんに、こう注意しています。
「相手を怒らせるかもしれないから、気をつけた方がいい」
ミラーリングをする場合、2つのことに注意しなければなりません。
人は自分と似た行動をとる人に親近感を持つが、わざと真似をさせるのは好まない。真似をしていると気づかれると、相手を不快にさせる可能性がある。
『ミステリと言う勿れ』最終話、新幹線の中で話をしている女性が、指に髪をくるくると巻きつけるというしぐさを、整くんが真似るシーンはわかりやすい例。
自分で気がつかないだけで、人は案外、誰かと同じようなしぐさや動作をしているものです。また仲良くなりたい、ビジネスで相手に気に入られたい時など、うまく取り入れれば人間関係を作るのに効果的です。