あまりの接戦に勝敗がわかるまで数日かかるとまでいわれていた米大統領選だったが、蓋を開けてみると、あっさりとトランプ氏が圧勝。 強いリーダーとして圧倒的な存在感を放ち、過激な誹謗中傷を繰り返すトランプ氏と戦うには、ハリス氏は圧倒的に準備期間が足りなかったのではないだろうか。
政策をあげたものの、トランプ氏のようにわかりやすく説得力のあるものではなく、そもそも本来あるべき候補者になるまでのプロセスさえ踏んでいなかった。 そこを勝ち抜いて生き残ってきていれば、違うアピールの仕方もあっただろう。
だが「The Achievements of Kamala Harris(カマラ・ハリスの功績)」というハリス氏の業績について書かれた本では、目次以外は白紙という中身のなさが話題になってしまった。トランプ氏にとっては、攻撃しやすい相手だったはずだ。
トランプ氏にとってはハリス氏を攻撃することで、女性が大統領になるにはまだ早い、そもそも女性が大統領になるのが反対という人たちに、米国に押し寄せる移民や移民政策をよく思っていない人たちに、インフレで困窮している人たちに、若くても生活が苦しい人たちに、アピールすることができただろう。
トランプ氏の勝利を聞いた友人が、「行儀の悪いことばかりしゃべって、行動しても、人々はついてくるんだ」と驚ろきの声を上げていたが、支持者たちにとっては、あの口の悪さがトランプ氏本来の持ち味であって、何を言おうと何をしようと、そんなことは折込み済みだっただろう。
日本では石破茂氏が、総理になった途端、豹変したと言われ、支持率は激減。 元の石破氏に戻った方がいいという声さえ聞こえるほどだから、トランプ氏が行儀よくなってしまったら支持者たちからブーイングが出るだろう。 トランプ氏の支持者たちは、この4年を一緒に戦ってきたような人も多いはずだ。 候補者となってわずか数か月のハリス氏の支持者たちとは、熱の入れようが違っていたに違いない。
今回の選挙戦、トランプ氏は何を言っても、何をしても許されるとアピールすることができた。 演説中に銃撃され、負傷したものの生き残り、「自分は神に生かされた」という免罪符を持っていた。 選挙戦まっただ中での暗殺未遂で、神が自分を生かしたのは再び大統領になるため、とトランプ氏はいえるのだ。 「神に生かされた」というのは、どんなものにも代えがたい免罪符である。
支持者たちもその免罪符を目にし、さらにトランプ氏への支持を強めていったに違いない。
隠れトランプ支持者の存在も大きい。特に今回、ハリウッドの有名人たちやセレブたちが次々とハリス氏支持を表明していたのだから、トランプ氏支持を明らかにしにくい雰囲気があったのかもしれない。
神に生かされたというトランプ氏によって、これから米国はどう変わるのだろう。