フジテレビの会見、冒頭の謝罪からみえてくる会社と被害者女性との関係性

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1月27日午後4時、参加メディアを限定せず、時間無制限で始まったフジテレビの長い長い会見。                        会見に出席したのは辞任を発表したフジ・メディア・ホールディングス(HD)とフジテレビ社長の港浩一氏、フジテレビ会長の嘉納修治氏、フジ・メディア・HD社長の金光修氏、フジテレビ副会長の遠藤龍之介氏、フジの新社長に就任する清水賢治氏。

会見で明らかになったのは、港氏以外は週刊誌報道が出るまで、この事案について知らなかったという事実だ。                 コンプライアンス推進室を持ち、コーポレートガバナンスに努めてきたはずのフジテレビには、コンプライアンスもガバナンスもまったく機能していなかった。                                              

事案を当初から知っていたのは港氏だけ。 

会見では説明していたけれど、 フジテレビの記者が指摘していたように”示談が済めばそのまま無きものにしたかった感”が拭えない。それはなぜなのか??                                                

まず会見冒頭、「社として人権に対する意識の不足から、女性へのケアが十分にできず申し訳なかった」と神妙な面持ちで述べ軽く頭を下げた嘉納氏。                                                    その横で港氏も軽く頭を下げる。                                                   

続いて嘉納氏がステークホルダーや関係各所の皆々様へ陳謝し謝罪。                                                            今度は全員がほぼ90度に近いほど深く頭を下げた。                                                  経営陣にとって申し訳ないと感じているのは、被害女性より、ステークホルダーや関係各所なのだろうか。                    

港氏は会見中「少人数で対応するのが女性の希望」「彼女のコンディションを常に意識して」と何度も口にした。                  謝罪の様子から、港氏をはじめとする経営陣と女性との関係性が表れている気がした。

女性の体調を注視していたという港氏だが、「女性側がどういう気持ちになっていると思うか」という質問にはしどろもどろ。                                                                 他の記者に「当該女性から会社側にどういう要求があったのか」と問われた時は、片手で口を覆っていた。                     要求という強い表現で質問され、どう答えるべきか困惑したのだろうか。                                  それとも言えないことがあるのだろうか。                                                  「誰にも知られず自然な形で職場復帰をしたいというのが希望」とボソボソと述べた。

「スポーツ特番などに出演した中居氏を見るのは女性からすればショックだったのでは」と問われると、「対応が正しかったのかどうか、ちょっと今でも違ったのかなというふうに反省しています」と述べて口元をきつく結ぶ。                        判断が難しかったと言い訳し、「完全に間違っていたのとは言い切れない部分もある」と前を見た。    

港氏の返答には「そうだったかも」「違ったのかなと」と“かも”“かな”という表現か多くみられた。                                           当時の判断に対して他の選択肢があっただろうことがうかがわれる。

質問に立ったフジテレビ社会部記者からは「女性のプライベートな領域のことを盾に情報隠微しているのでは」と指摘され、視線を落とす。                                                      当時コンプライアンス室長だった遠藤氏に情報共有しなかったことについて聞かれると、肩を落として背中を丸める。「少人数で彼女が職場できるまで寄り添っていこう」と答え、「それが一番最善だということで決めました」と背筋を伸ばして顔を上げた。                                                    少人数でというその判断は間違っていなかったと思っているのだろう。

フジテレビの記者は関与が疑われている社員A氏と港氏が懇意にしていたと聞いたと述べ、「隠したいものや守りたいもの、示談が済めばそのまま無きものにしたかったというものはなかったのか」と質問を投げかけた。                         視線を落として聞いていた港氏は「守りたいとか隠したいとかいう気持ちはありませんでした」と眉間に深くシワを寄せて返答。                                                              このように言われることにいら立ちや憤りがあることがわかるい。

その後もA氏について、中居氏への聞き取りと2人のSNSなどのやり取りだけで関与を否定したことを問われると                         「関与していないと信じるに足るものが」と表情を強張らせ「特定日に当該社員は関与していないと思っている」。「SNSの履歴は消せる」「女性に聞かず、結果で断定したのはなぜか」と追求されると口を真一文字に結んで視線を落として黙り込む。                                                                一拍を置いて口を開くと「関与していません」と目をつぶり頬をやや紅潮させて言い切った。                              港氏には確信があったのだ。

 中居氏の番組継続に、もっと早くに番組が終了できた可能性について追及されると「その時は彼女のコンディションが悪かった。刺激するかもしれないと思った」と弁明。                                           事案についてはプライベートでセンシティブな出来事の中で行われたこととして、“特殊な事例”と述べた港氏。                             「女性の心身の様子を最優先に見ながら進めていかなければいけないところ」と特殊について説明したが、「加害者が中居という国民的スターだったから」と言われると小さく頷いた。                                        実際には加害者が中居氏だったことも、この事案を特殊なものにしていたのだろう。                              だが「そっちを守ろうということが特殊だったのでは」と問われると、「そういう気持ちはありません」と視線を落として否定した。                                                            特殊ではあったが、中居氏を守ろうという気持ちはなかったということか。

中居氏に対する質問では「怒りを感じていると捉えてもらって結構です」と視線を落とした。                             「いったい誰に対してどう感じているのか」と問われると、「中居に対して怒りを感じている」と目を伏せながらも淡々と答える。                                                                  怒りを感じていると言いながら、顔をしっかりと上げ前を向いてきっぱりと否定することはない。 

示談が済めばそのまま無きものにしたかったように受け取れてしまう会見だった。

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この記事を書いた人

臨床心理士、文学修士
経営心理コンサルタント、商学博士
コミュニケーションやボディランゲージの分析、バイアスに関するコンサルティングなどを行っています。
話題の出来事や時事問題から、注目されている人物、ドラマ、映画まで幅広いテーマについて、心理学や行動経済学、リスクマネジメントなどを用いて、独自の視点で分析する記事を書いています。

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